「便利屋さんのお仕事あれやこれや」<婚礼家具の廃棄処分>

婚礼家具の廃棄処分

「せーの」と、便利屋の大将の掛け声がかかる。
それと同時に「バリバリ」と轟音。
タンスが、家の中でみるみるうちに破壊されていく。

世の中には、捨てきれない物がたくさんある。
それは例えば「遺品」であったり「子供の小さい頃のおもちゃ」であったり、いわば、思い出のたくさん詰まった物たちだ。
そして「婚礼家具」も……。

「引越しをするんですが、今度の家はクローゼットがあるので、家具が要らないんです」
そんな電話を受けて、いつもの様に僕は便利屋の大将へ連絡をする。
「家具なあ、今時、中古の家具はなかなか売れへんからなあ。それでもええ、言うとるんか?」
「まあ、出来ればただでもいいから大切に使ってくれる人に譲りたい、とは言われてましたが」
「わかった、まず、下見や」
と、大将。

「どうでした?」
「あかんわ、ごっついええ婚礼家具一式や。桐やで。それはそれは立派なつくりや」
「じゃ、だれか使ってくれる人がいるかもしれませんね」
「それが、あかんねん。出えへん」
「出えへん?」
大将が言うには「改築」をしたおかげで家具が廊下を通らない、つまり、運び出せないらしいのだ。
「で、どうするんですか?」
「家の中でぶち壊すしかない。なわないはん、大掛かりな仕事やからあんたも来てえな」

「バリバリバリ」
大将がでかいハンマーとバールで、タンスをめった打ちにする。
「さすがに頑丈や」
ゴミが散らからない様、きれいに養生をした部屋一面にホコリが舞う。
「バリバリバリバリ」
立派なタンスがあっと言う間に木材の破片になる。
「さあ、次は和ダンスや」
轟音と共に和ダンスも木片となっていく。

当の家族は別の部屋に潜んで居る。
もちろん、大将は事前に「ぶっ壊す」事を告げて、そして納得をしているが……。

婚礼家具だから、当然、結婚が決まった時に夫婦で選んで買った物だろう。あるいはお互いの両親と共に、あれこれ選んだかもしれない。
その、夫婦の証の様な宝物が、引越しだからと、次のマンションにはクローゼットがあるからと、無残にゴミになっていく。

「さあ、もうこれ位で運べるやろ。なわないはん、出番や」
そして、僕はバラバラになった「元」婚礼家具を拾っては、トラックの荷台に放り投げる。




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Author:なわない 【おとなの絵本】

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