電磁石マスター「ショットバー石川」

「電磁石マスター」

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神戸は東山商店街のほぼ北の終点に、ひっそりと小さなショットバーがある。
お店の名前は「石川」
石川はマスターの苗字だ。

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僕はこのマスターの事をひそかに「電磁石マスター」と呼んでいる。
永久磁石ではなく、電磁石
なぜ、電磁石かと言うと、こんな感じ。

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「マスター騒いでごめん、もう帰るわ」
「すまん、ちょっと酔いすぎた」
カウンターの中央でさっきまで大声で喋っていた2人連れの客がいきなり席を立った。
僕はカウンターの隅っこで一人くすくす笑う。
マスターが電磁石のボリュームを小さくしたのだ。

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「なわないさん、ごめんな、うるそうて……」
2人だけになった僕に向けて、マスターが電磁石のボリュームを上げる。
『もうちょっと居ろよ』の合図だ。

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商売は客を選べない。
いやな客であろうが、好きな客であろうがニコニコと笑い顔で対応をしなくてはならない。
このショットバーの石川も同じこと。
泥酔の客にも、くだらないウンチクを語り続ける客にもカウンター越しに、ウンウンと頷かなくてはいけない。
帰れとも言えない、もっと居てくれとも言えない、そんな商売を続けているうちに、いつの間にか「電磁石」が身体に備わったのだろう。

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ただ、このマスターの電磁石はあまり力が強くない。
団体さんが入ってきて大騒ぎをしだして、マスターが電磁石のスイッチを切ってもどうやら大人数には効果がないようで、そんな時、マスターはふてくされて別室に隠れてしまう。

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マスターの電磁石の力は時々、外に漏れている。
初めて入った時は、その磁石の力に僕が吸い寄せられたのだと思う。
反対にマスターの電磁石が漏れていない時もある。
そっと、店の中を覗くとマスターは自分の好きな音楽をかけてボーっとしている。
『今日は客の相手はしたくないよ……』
なんてわがままな電磁石オヤジだ!
僕は微笑みながら、通り過ぎる。

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今日はとても強い磁石が店から流れていた。
「よお」とマスター
「まいど」と僕。
いきなりマスターは僕にむけ電磁石のボリュームをフルにする。
『ゆっくりしていけ』の合図だ。
「ほら、前に言ってたあの……」
お客の僕を差し置いて、マスターは喋り出す。
ところがだ、ひとしきりアホな話に興じていると、
からんころんと、店のドアが開く音がした途端、僕の電磁石ボリュームがゼロになった。

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<なわないさん、すんません>

ドアを開けたのは若い女性
マスター、僕に向けていた最大級の電磁石パワーをその若い女性に向けやがった!




神戸市兵庫区東山町2丁目11-11
ショットバー「石川」
※電話番号は自分で調べろ、との事です。

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プロフィール

なわない 【おとなの絵本】

Author:なわない 【おとなの絵本】

スピーチライターやってます。

「うらない」じゃなくて、「なわない」
うらないとかに頼らずに、自分でなわなう。
うらなわないから、なわない。

おとなの絵本の作者です。





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