僕の阪神・淡路大震災 九、僕のトラウマ

僕の阪神・淡路大震災 九、僕のトラウマ

家に帰った。
家内の両親がいた。
一番被害の厳しい「長田区」から、靴もなくなり素足で僕の家まで逃げてきたという。
僕の両親も弟に連れられてやって来た。
二人とも、全ての指先に血の塊がこびりついている。埋もれたものを素手で探したという。

余震が来た。
僕は大声で叫んだ。
「たんすに対策をしたのか。二次災害の恐ろしさを知らないのか!」
だれも、何も言わなかった。
家内がトイレで泣いた。

その夜は僕の好物の「すき焼き」だった。
帰ってくる僕のために方々探して、肉を見つけたと家内が言う。
カセットコンロでゆっくり煮あがる「すき焼き」を大人数で少しずつ食べた。
一個だけあった缶ビールを飲んだ。

息子も娘も、何も僕に喋らなかった。
ろうそくの炎が余震にあわせて揺れた。

布団が足りなかった。
妻の両親が一人分の布団で寝ることになった。

そして、僕は次の日、弟のジープで自分のファミコンショップに戻った。

それから、電車が動き出すまでの二週間、僕は寝袋を買って店で寝た。
まだまだ大繁盛だった。
対岸の火事の被害のないこの街では、みんながテレビに飽きていた。
神戸から流れてきたゲームを安く買い、暇をしているこの街の住人に高く売りまくる毎日。
さあ、みんなのために稼がなくっちゃ!!!

でも、それは、嘘だ。

一日だけ家に帰って、よく解かった。

僕は異邦人だった。

あの時、あの当日に家族と居ればよかった。
何百キロであっても家に帰ればよかった。
店なんか捨ててしまえばよかった。

一番必要とされている時に、僕はみんなを守らなかった。
不安を恐ろしさを、共にしなかった。
僕は、なんとも卑怯なやつ。
逃げたんだ。結局。

あの日以来、僕は自分の心の中で「家長」ではなくなった。


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jisin10
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なわない 【おとなの絵本】

Author:なわない 【おとなの絵本】

スピーチライターやってます。

「うらない」じゃなくて、「なわない」
うらないとかに頼らずに、自分でなわなう。
うらなわないから、なわない。

おとなの絵本の作者です。





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